徳之島・朝川果樹園が紡ぐ、父から子へ受け継がれた「太陽の果実」
奄美群島の中でも、とりわけ農業が盛んな島、徳之島。
その北側にそびえる天城山の麓、南向きのなだらかな斜面に「朝川果樹園」は広がっています。かつて徳之島は「奄美群島のウクライナ(穀倉地帯)」と称されたことがあるそうです。それは、サトウキビやジャガイモ、グアバなど、どんな作物でも良く育つ、肥沃な大地であることを物語る言葉でした。
山から吹き下ろす冷たい風と、燦々と降り注ぐ陽光。昼夜の寒暖差があり、絶好の環境で育つ、朝川果樹園のタンカンについてご紹介します。
国の天然記念物が暮らす果樹園
「クロウサギが来よるんよね」 園主の朝川栄(あさかわ さかえ)さんが、最初に見せてくれたのは、自慢のタンカン……ではなく、アマミノクロウサギの糞でした。彼が指差した木の根元には、コロコロとした小さな黒い粒。
「ほら、ここが巣穴です」。木をかき分けて斜面にを見ると穴を埋めたような跡が。これが、国の特別天然記念物であるアマミノクロウサギの巣だということです。
同行くださった岡山さんの話によれば、クロウサギはハブなどの外敵から身を守るため、普段は巣穴の入り口を土で塞いでいて、夜になると、親ウサギがやってきて入り口を開け、子育てをするのだとか。
畑の脇には南国情緒あふれるソテツの巨木が立ち並び、足元には太古の生き物が息づいている。果樹園の位置する場所は、単なる農地ではなく、多様な命が循環する大自然の一部でした。

東京からの帰郷。亡き父の想いを継ぐ
そんな豊かな圃場を守る朝川さんですが、かつては東京で営業職として働き、島に戻るつもりはなかったと言います。
転機が訪れたのは、お父様が亡くなられた時でした。一人残されたお母様を支えるため、そして、父が35年前に役場を退職して一から切り拓いたこの果樹園を守るため、帰郷を決意したと続けます。
「最初はビーバーの使い方もわからなくて、本当に苦労しましたよ」 そう語る朝川さんの表情は、苦労話をしているはずなのに、どこか穏やか。
2月の収穫が終われば、すぐに来年に向けた土作りが始まり、夏場の徳之島の太陽は強烈で、日中は作業ができないため、薄暗い早朝から剪定のハサミを握る日々。けれど今は、毎年2月にどんな果実が実ってくれるのか、その答え合わせをする瞬間が楽しみだと話します。

実直な人柄が滲み出る、優しい甘さ
体中から「人の良さ」が溢れ出ているような、実直で温厚な朝川さん。
そんな朝川さんが、天然記念物と共生しながら、南国の太陽をたっぷりと浴びせて育てた徳之島のタンカン。それはきっと、作り手の人柄そのままに、優しく、そして力強い味がするはずです。
奄美大島のタンカンの味わいとはまた違う、徳之島ならではの濃厚なコクと甘み。
ぜひ、産地ごとの個性を食べ比べながら、遠く離れた豊穣の島に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
#徳之島 #タンカン



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