月刊たるさんの記事

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待つこと ー 文/川嶋舟

2018年 06月18日 15:27

 夏の躍動感を感じさせる陽射しのもと、新緑の中を通り抜けてきた森の香りに富む清々しい風の中で過ごす落ち着いた時間は、心身ともに充実させる魔法のようです。日々時間に追われるように生活をしていく中、自然の中で生きていることを満喫する機会は意識しなければ持てなくなっています。自然科学の求める効率化された社会に忙殺されることなく、自らに与えられた一度限りの人生を楽しむことができる世の中が日常となることを願います。
 時が早く進む社会の中で生活をしていると忘れがちなことに「待つこと」があげられます。文明が進歩し便利な社会となる中で、あまり「待つこと」をしなくなりました。多くの「もの」や「こと」について、分かり易い評価である成果を目標とすることで、短期間での結果を求めるようになり、私たちは「待つこと」を忘れてしまったように感じます。いつでもサービスを受けることを可能とする24時間営業のお店が多く存在し、それが当たり前のこととして社会で受け入れられています。自分の欲求をすぐに満たすことができるようになる中で、時間をかけることの大切さに重きが置かれにくくなり、「待つこと」の価値が失われつつあります。
 時間をかけて丁寧に対応しなければならない物事も少なくありません。馬をはじめとする動物たちも、調教し新しい事が出来るようになる際にはそれなりの時間が必要です。私たちも同じで、新しいことを学び修得する際には、一定の時間をかける必要があります。
 子どもの成長も同じように感じます。ある程度の時間の中で教え導くことを繰り返しながら積み重ねることで初めて、様々な事ができるようになるのです。本人がしっかり向き合う時間も大切です。しかし、そこに関わる教え導く側の人間の時間的余裕のなさから、十分な時間を必要とする学びの途中にある相手に対して「待つこと」を忘れ、急かしてしまうことも少なくありません。
 「待つこと」は、相手の成長を促すだけのものではありません。待つ間に、自分自身を見つめなおすことができ、自らの意識を深められます。更に時間に追われている時には気付きにくい、弱い立場の方の声などにも心を寄せることが可能となります。相手が変化していることを感じ、見通しを待ちながら「待つこと」は、人の成長の過程に関わる際には今まで以上に大切にされても良いように思います。
 子育てや学生など次世代を担う人材の育成に関わる時には、効率的で早い事のみに執着せず、じっくりと「待つこと」ができるようになりたいものです。


シリーズ「お酒と福祉の醸す日々」・「酒米と福祉」

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